ウェブトゥーン産業実態調査に見る海外市場の見通し、作家に対する海外からのオファー、AI活用の実態

『ウェブトゥーン産業実態調査2024』に関してはすでに1本記事を書いているが、世間での関心が高いであろう海外展開とAI利用についての情報を整理し、筆者が見聞きした範囲の話も含めてまとめたい。
飯田一史 ichishi iida 2025.05.10
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■ウェブトゥーンの直近の市場動向

その前に簡単にサマリーを載せておこう。

韓国ウェブトゥーン産業はプラットフォーム(PF)売上高が前年比25%増の1兆4094億ウォン、コンテンツプロバイダー(CP)企業の売上高は7795億ウォンで11.1%増加、産業全体の規模は2兆1889億ウォンと推定。

・収益構造

有料コンテンツ収益が全体の67%を占める。

二次著作権収益(キャラクター商品化等)が4.6%で成長傾向。

輸出収益は全体の14.1%を占め、前年比5.5%増加。

ウェブトゥーン作家の平均年収は4268万ウォン。ただし55.3%の作家が週50時間以上の創作活動に従事し、過重労働は毎年報告書で指摘されているが、改善の見込みは立っていない。

■韓国から見た海外市場/輸出の現在と見通し

『ウェブトゥーン産業実態調査2024』では海外市場の動向と展開について

・2023年にはウェブトゥーンの輸出は前年比15%以上増加し、BLがとくに目立った

・2024年には輸出では日本市場は好調、ヨーロッパではプラットフォームが多数撤収。北米とヨーロッパはウェブトゥーン・フォーマットよりも単行本の出版契約を中心に市場拡張

・中国市場は景気後退で減少。輸出、現地の制作・編集いずれも減少

・輸出企業の78.4%が10万ドル未満の小規模輸出

・2024年の輸出規模は横ばいか小幅増加程度で着地

今後の予想としては

・国内CPは約50の事業体に縮小するだろう

・日本とアメリカでは現地のプラットフォームやCPの追撃が本格化し、韓国の事業者は圧迫される

と見込まれている。

日本のマンガ業界では「北米のデジタルの売上」が有望視されているが、韓国では「欧米ではウェブは無料で読ませて、売るのは紙じゃないと厳しい!」というトーン

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続きは、5706文字あります。
  • ■ウェブトゥーン作家に対する海外からのオファー
  • ■作品制作におけるAI活用
  • ■筆者が見聞きした事例
  • ■中国のコンテンツ産業のIP展開はなぜ大半が失敗に終わるのか

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