newsletter vol.11 今週気になったコンテンツ産業関連ニュース
2020年国内メディア・コンテンツ市場、配信急伸も前年比4.8%減の13兆1076億円
ヒューマンメディアから刊行された「日本と世界のメディア×コンテンツ市場データベース2021 Vol.14」によれば、映画、カラオケ、アーケードゲームといった分野が大きな落ち込みをみせた。他方で巣籠り需要などもあり、映像と音楽の配信サービス、スマホアプリ向けゲーム、電子書籍・雑誌などのネット流通分野が大きく伸びた。家庭用ゲームソフトも好調。日本から輸出されたコンテンツの海外売上の市場規模は2019年に2兆円超え、7年間で3倍近くに。最も大きいアニメだけで1.2兆円超の市場。
そうはいっても輸出入って大変だよな、と思ったのでそういう関連のニュース中心に集めてみました。
【プロの眼】ゲームビジネスのプロ 佐藤翔 第2回 インフラの3大要素「通信・決済・販促」
「日本に比べ所得が少ない新興アジアの人々にとって、通信料の負担は相対的に重い。モバイルゲームの基本料金がいかに無料(アイテム課金制)であろうと、それをダウンロードするための通信は有料。こうした矛盾を突く形で成り立っているのが「ダウンロード屋」。
コンテンツ自体のローカライズのみならず提供方法(記事タイトルにある「通信・決済・販促」)も国・地域に合わせる必要があり、現地事情に精通しているとこういうダウンロード屋なんかを前提にビジネスを組み立てることができると。
『ばなにゃ』グッチとのコラボレーションで特別アイテムを展開 http://Gucci.com、全国のグッチショップにて発売
クランチロールではアジアを除く世界で『ばなにゃ』のIPを展開。『ばなにゃ』の関連商品は、北米では100万アイテム以上の売れ行き。
不勉強ながら『ばなにゃ』自体知らなかったのですが、グッチとコラボとは……なんでハイブランドにまでつながったのか。取材しようかな。
コラム:韓国ネット大手、ウェブトゥーンIPOで新展望開くか
2020年売上高(7億4400万ドル)のカカオエンターテインメントが、20兆ウォン(180億ドル)以上の企業評価額を念頭に新規株式公開(IPO)を視野に入れており、競合するネット大手ネイバーの傘下部門も海外での上場を模索。韓国コンテンツ振興院によると、2019年の国内ウェブトゥーン市場は約6400億ウォン(5億7800万ドル)。ネイバーの29日の発表によると、ウェブトゥーン事業の売上高は第1・四半期に43%増加。全世界の月間アクティブユーザーは前期に7200万人と、ネットフリックスの有料会員の35%に達した。未来アセットのアナリストは昨年4月、同業界での有料利用者1人当たりの料金収入は約3000ウォンから1万ウォン(9ドル)強に増える可能性があると予想した。ネットフリックスは1月に会員1人当たりの料金収入が11ドルだと明らかにしている。
IPOして資金調達して何するんだ? という話ですが、明らかに国際展開を見越してさらに投資していくためなんですよね。上場ゴールみたいなことが目的になっている会社とはわけが違う。
NAVERがウェブ小説・漫画で協業本格化 相乗効果期待
NAVERの韓聖淑(ハン・ソンスク)社長はこの日、1~3月期の連結決算発表後のカンファレンスコール(電話会議)で「波及力のあるオリジナルコンテンツをウェブトゥーン(ウェブ漫画)とウェブ小説の形でそれぞれのプラットフォームで同時配信し、効果を高めていく」と言及した。両社の人気コンテンツ、ワットパッドが進行中の映像化プロジェクトを中心に、下半期には相乗効果が出ると見込んだ。まずはウェブトゥーンで検証された収益モデルをワットパッドに取り込み、創作者とプラットフォーム間で収益を合理的に分配し共に成長していくエコシステムをつくり上げると説明した。
つまり、現状のワットパッドモデル(ユーザー利用は無料の広告モデル)はやめてNAVER WebtoonやLINEマンガで採用しているモデルで課金&作家に収益配分していくと。これはたんにコンテンツの調達・展開をグローバル展開したいというだけでなくて「北米で韓国発のビジネスモデルを成功させる」ことに韓国企業の悲願というかプライドが懸かっている面があると思います。
SMエンタ、米MGMとタッグ!「NCT-Hollywood」ローンチへ
これもそうですね。SMエンターテインメント創業者のイ・スマンはフォークシンガー出身でその後テレビ番組の司会者などとしても成功を収めていたけれども光州事件があって韓国に絶望してアメリカに留学、そのときMTVに出会って「これからは映像と音楽とテクノロジーが一体になる時代が来る」(スマンは米国でコンピュータサイエンスを学んでいた)と感じて韓国に企画して事務所を立ち上げた、という話は有名で、北米での成功は目標のひとつでした。少女時代、SuperMと何度もチャレンジしていますが、今回、「他事務所と違ってSMはサバ番(サバイバル型オーディション番組)はやらない」というプライドを捨ててまでアメリカで「NTCハリウッド」というアイドルを作るのも、「アメリカでの成功」に特別な意味を見いだしているからだと思います。
もっとも、スマンは20年くらい前に「週刊東洋経済」で受けたインタビューでは「北米進出は中国攻略の足がかりにすぎない。21世紀はアジアの世紀になる。アジアを制する者が世界を制する」みたいなことを言っていて、SUPER JUNIOR、EXO、WayVと連綿と中国進出も並行して進めてきたし、東南アジアでも同様の現地発のNCTを立ち上げようとしているのですが。
カカオジャパンが4月19日、韓国国内に初めての子会社「studio1pic」を設立
studio1picはカカオジャパンのウェブトゥーンコンテンツ制作スタジオ。韓国漫画雑誌市場の全盛期を率いた『IQジャンプ』の元編集長であるキム·ヒョンジュ代表をはじめ、ウェブトゥーンやウェブ小説専門企画者、現職ウェブトゥーンの人気脚色作家などがstudio1picを率いる。
これがおもしろいのは韓国カカオエンタの子会社ではなく、日本法人であるカカオジャパンの子会社を韓国に作り、韓国人スタッフを中心にして日本向けのウェブトゥーンを作ろうとしている(らしい)ところです。ストレートに韓国で作った作品を日本に翻訳展開するのではない意図はなんなのかが気になるところです。
1pc(1pick)というネーミングは著名サバ番Produce101シリーズから来ていますね。ウェブトゥーンでサバイバルでもやるのかな???
NAVERはLINEマンガサービスの大規模改編を予告
LINEマンガは前年同期比で取引額20%以上の伸び。日本市場1位奪還のためオリジナルコンテンツ制作を強化するためにコンテンツ推薦サービスなど多様なサービスに力を入れる。連載サービスの強化に力を注いでおり、現在割合で下半期には約2倍に拡大。
KADOKAWAが米社J-Novel Clubを買収、翻訳ラノベ電子出版のベンチャー
J-Novel Clubは、日本のライトノベルの翻訳版の英語電子出版とサブスクリプションサービスを展開している。2016 年にサミュエル・ピナンスキー氏がテキサス州で設立した新興企業だが、ライトノベル需要の拡大で、急成長を続けている。KADOKAWAによれば、世界では日本のアニメ市場の拡大と共に、作品の原作となるライトノベル市場も拡大している。特に北米を中心とする英語圏は好調で、今後はさらなる成長を見込めるという。
「急成長」という定性的な表現しかなくて具体的な数字がないのでなんとも言えない。このへんがウェブトゥーン市場に関するニュースと大きく違うところで、「数字出せないってことはしょぼいのかな」と勘ぐってしまう。
ノベリズムの電子書籍レーベル「ノベリズム文庫」が創刊! 4月26日から主要電子書籍サイトにて配信スタート
電子書籍化に伴い、ノベリズム上に掲載の本編をまとめ加筆修正、更に本文カラーイラストを豪華描き下ろし! 創刊ラインナップは5作品!
中国系資本の株式会社YANNが運営する小説投稿サイト発の作品が電子書籍レーベル立ち上げ。ノベリズムはそもそもサイト内に連載された作品に対する課金機能があるのですが、日本のマーケットでは(あるいはサービスに対する現状の知名度だと)それだけでは十分な収益になっていなくて何か手を打つ必要があり、紙の出版と比べてコスト/リスクが少ない電子書籍を始めた、ということなのかなと推察します(おそらく、同じく中国系のマグネットマクロリンクが紙の本を手がけたが失敗して撤退したというヤケドの程度を踏まえている)。
ウェブ小説分野にすらKOL(インフルエンサー)がいてSNS上のマーケティングが大きな影響力を持っている中国市場と、地上波で映像化されるかマンガ化されないと小説に関してはなかなか認知が広がらない日本市場ではかなり性質が異なるので、電子書籍レーベル作っただけではどうにもならないと思いますが……。
outro
去年のGWに内見した家に今住んでいるのですが、本当に去年は仕事は減るし、子どもは保育園が休みでずっと家にいてかまわないといけないしで精神的にしんどかったですが、今年は相当マシです。多少余裕がある人間として医療や飲食関係者を支援したいと思います。
オリンピックやるかどうかで揉めていますが、戦うべきはウイルスであって人間同士争うなんて、ゾンビ映画みたいで悲しいというか、ゾンビ映画を見てその振る舞いのやばさについて学ぶべきでは?(と言いつつぐだぐだすぎる政治にはうんざりする気持ちや怒りが僕も少なからずありますが)。ではまた。
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