中国のウェブ小説動向3:2022年

タイや韓国についても少々
飯田一史 ichishi iida 2022.10.17
誰でも

网文读者有5亿,阅文占一半,为何还是难尝300亿市场的甜头? 5億人の読者を抱える閲文は市場の半分を占めているのになぜ300億ドル規模の市場のスイートスポットを開拓することがまだ難しいのか? -2022-05-12 19:54

・中国社会科学院は「2021年中国オンライン文学発展研究報告」を発表。2021年末時点で、中国のオンライン文学市場の規模は300億元を超え、オンライン文学ユーザーの総規模は5億200万人に達し、前年同期比4145万人の増加、インターネットユーザー総数の48.6%。

・閲文集団は、月間アクティブユーザー数2億5000万人、市場シェア5億の半分を占める。2021年、新たに120万作品を追加。1000以上の出版機関と協力し、オンラインで40万冊以上の電子書籍を出版。

・2021年の有料ユーザーの月間平均支出額は39.7元で、前年比14.4%増だが、月間平均有料ユーザー数は870万人で前年比14.7%減。これは、2021年の無料読み物コンテンツのDAUが約1,500万人で、前年比50%増であることと対照的。

・同じくテンセント傘下で、閲文のリソースを多く取り込んでいるWeixin Readingは、36%の成長率で「無料読書」の旗印を掲げている。

・「2021年中国オンライン文学発展研究報告」によると、2021年末までに、閲文の海外読書ブランド「WebNovel」は、中国オンライン文学の翻訳作品約2,100本を発売し、累計ユーザー数は4千万人を超え、海外原作者4万5千人以上を育成し、海外原作約37万本が北米、欧州、東南アジア、アフリカに広がっています。

・長年の海外ユーザー教育と市場開拓を経て、閲文集団は、海外での出版とライセンス供与という1.0の時代から、海外でのプラットフォーム構築とオンラインコンテンツ輸出という2.0の時代へ、そして現在は海外でのオリジナルコンテンツ発売とIPコンテンツ輸出という3.0の段階を迎えている。

※韓国ウェブトゥーンとまったく同じ

決算短信で最も光っているのは、サードパーティーのゲーム配信によるプラットフォーム収入など、文芸IPとゲームの連動で、成長率は3桁に迫る勢い。IPゲームに加えて、閲文は2020年にXinli Mediaの買収に大きく費やした。Xinli Mediaは『雪国の剣』『男の世界』などのテレビドラマやアニメ、そして現在大ヒット中の『風立ちぬ』など、数々のヒット作を生み出してきた。

その中で、2021年末にスタートした「雪中の戯言」は70億近くの放送を達成し、2022年初めにスタートした「人界」はCCTVとアキヤイに連続上陸し、視聴率は8年以来最高を更新、新麗メディアが投資した映画「この殺人者は穏やかでない」は春節の興行収入が26億に達した。

2020年、閲文は突然著者の契約を変更し、プラットフォーム著者の著作権はグループに帰属し、原著者は「雇用」と「委託制作」としてのみであることを明確に要求し、原著者の作品を翻案したい場合、支払う必要はないとした。このため、ネット文学界は騒然となり、90%以上の作家が抗議の声を上げ、共産主義青年団中央委員会までもが中華人民共和国の著作権法を尊重するよう求める書簡を出したという。

これに対して閲文は、契約変更を発表し、さまざまな作家の開発要求に応えるため、基本契約、ライセンス契約、詳細契約の3種類の主要な作家協力契約を導入する「単一選択型新契約」をリリースした。

※有料課金で成長してきた閲文からすると番茄や七猫のような無料小説の台頭は苦々しいもので、自分たちも対抗して無料サービスを投入したもののどうやって収益上げるのか→IP展開で稼ぐしかないが、現状だと作家が強すぎる→無茶な契約変更→炎上→サーセン ということかと。

韓国でも同じですが、作品が育ってめちゃくちゃ売れるようになると作家の力がどんどん強くなってプラットフォームや出版社は作家有利な条件を飲まざるを得なくなり、「独占配信契約にしたから読者は来るけど利幅が小さい……」「あれ、IPの二次展開で儲けるはずが、投資がでかいわりにそんなにおいしくないぞ……」となることもあると。

タイのマフィア・ロマンスシリーズ「キンポルシェ」が世界的大ヒット 2022.05.10 TheStraitsTimes(シンガポール)

・中国のストリーミングプラットフォームiQiyi Internationalは、初のタイシリーズ「KinnPorsche The Series La Forte」でボーイズラブというジャンルに踏み込んでいる。原作は作家デュオDaemiの同名ウェブ小説で、ボディガードのポルシェがマフィアのボスの次男キンと共にマフィアの裏社会を渡り歩いていくというストーリー。

男性同士の恋愛を描いたボーイズラブ(BL)ドラマは、タイ最大のエンターテインメント輸出作品の一つ。4月2日に第1話が配信開始された後、iQiyiによると、KinnPorscheは191の地域でストリーミングチャートのトップになった。

・iQiyi初のタイオリジナル番組であることに加え、MileとApoにとって初のBL番組でもあります。

※タイでもウェブ小説原作ドラマが爆発的なヒットをしているという話。で、ドラマを作ってるのは中国企業。タイの電子書籍市場にはテンセントが現地のウクビと組んで進出していたり、テンセント系のWeTVもタイ展開していたりしてますね。

〔WORLD・WATCH〕韓国 国内作家の小説が人気=趙章恩 2022.06.28 エコノミスト 第100巻 第25号 通巻4752号 85頁

・韓国最大規模の書籍チェーン「教保文庫」と最大オンライン書店「Yes24」が公開した6月6日までの2022年上半期総合ベストセラーによると、小説売上高に占める韓国人作家の割合は44・4%と過去最高となった。

・ベストセラー入りの作品の中には、誰でも投稿できる小説サイトやオーディオブックで話題になった小説を出版したものも。韓国では長年、大手新聞社主催の文学公募で選ばれたり、著名作家の推薦で出版する「登壇」を重視する傾向があったが、今では誰でも作家になれる環境が整っている。

・大韓出版文化協会が毎年公開する「出版市場統計」によると21年の出版業の売上高は約4・3兆ウォン(前年比6・1%増)、電子本(ウェブ小説など)の売上高は約0・5兆ウォン(同22・7%増)と増加傾向。

※他の数字を見ても韓国のウェブ小説市場の規模は5、6000億ウォン(5,600億円)。ウェブ小説市場が成長したことによって外国の作家に押されていた国内市場が活性化したと。国際化の一方で(中国でもそうですが)、われわれの国の小説はおもしろいぞという自負も増していると思います。

明日は韓国ウェブトゥーン・ウェブ小説関連記事を少し紹介します。で、毎日更新は明日で終わりです。newsletterを書きながらインプットもできたし、日本の事業者ができること・やるべきことも見えてきたように思います。

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