『書店員の怒りと悲しみと少しの愛』について
3月14日(土)に東京 西荻窪の今野書店のイベントに出演する(オンライン配信あり。お申し込みの方はアーカイブ視聴可)。
knott booksの第一弾書籍『書店員の怒りと悲しみと少しの愛』発売記念。
今野書店は昨年、日比嘉高先生の『帝国の書店』のイベントに出たとき以来。
書店の生の声について私は『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』を書くときに日書連の「全国書店新聞」や日販の「日販通信」などを調べていて気になったものはメモしている。
何十年も無限ループしている話題も多い。代表的なものは
・配本への不満
・書店業の利益の少なさ・賃金の低さ、それに見合わない忙しさ
である。Xでもしばしば出る話だ。
これは構造的な課題が背景にあり、根本が変わらないかぎり正直今後も尽きることはない呪詛である。
『書店員の怒りと悲しみと少しの愛』にもそういう、そもそもの出版流通のしくみに由来する徒労感も少なからず描かれている。
ただこの本がやろうとしていることは、問題解決に向けて声をあげるというものとは少し違うと思う(出版社や取次に対して「問題提起」をしている本であることは間違いないが)。
この本の特徴、注目すべき点は書店業に対して当事者しか知り得ないようなディテールが、その作業とひもづいた感情とともに書かれていることだ。
出版社から送られてくる新刊ゲラをノーギャラで勤務時間外に読むこと。
SNSに書いた本の推薦文を(無償で)使わせてくれと頼まれること。
推薦文がバズったらAmazonが品切れになるが、自店の売上にはとくに影響がなかったこと。
こうしたことが、書店員のお金や正当な評価につながったほうが当然いい。
しかしまずはそういうモヤモヤがあると可視化され、共有されたことが重要だと思う。
今度のイベントにも関係しているある人から(名前を出していいか確認を取っていないので伏せる)「『書店員』とひとくちに言っても、店の規模や担当ジャンル、任せられている裁量が店によって全然違うから、意外と同じレベル感で話ができる人がいない」と聞いた。
たしかに大手取次と口座のある小書店と、そうではない独立系書店では仕入れ・配本についての悩みが違う。多種多様な兼業をしている大書店では、本屋に就職したつもりが急に「春から飲食の方に異動」と言われて面食らうこともあるし、店で接客するものだと思っていたら外商担当になって大学の研究室をまわることもある。チェーン店勤務で本部で基本的に発注するために自店に仕入の裁量がないのが不満なこともあれば、個人店で何もかもひとりで全部決めないといけなくてやることが山積していくのが心理的な負荷になっていることもある。
悩みの種類が違いすぎる。
ただ外側からは、その違い、具体的に何がしんどいのかは、あまりわからない。
この本のように「こういうのがつらい」と書いてある本があれば、近い立場、近い気持ちでいる人同士がつながるきっかけになるだろう。
そういう感情を引き起こしている問題自体は解決しなくても、少なくとも支えあえる仲間を見つけるきっかけになる。
書店組合にはもともとは近い境遇にある人たちの互助機能、グチのはけ口としての機能もあったし、最近なら独立書店ネットワークもそういう部分があるのかもしれない(具体的に何をしているのか、よく知らないけれど……)。
ただ組合加盟書店でもなく独立系書店でもない、あるいは組合で活動しているのは店長だけで現場で働いている人間は別にそういう集まりに行くわけでもない、という書店員・書店主も多い。そういう人たちほど横のつながりがつくりにくく、わかってくれる人が身近にいないのかもしれない。
いつも言っているけれど、図書館は研修や大会があって立場の近い司書や行政職員が集まって情報交換できる場がある一方で、書店員はそれと比べるとはるかにない。あったとしても勤務時間や休みの日はバラバラだから結局集まれないとか、店を閉めたらその分売上が減るからネットワーキングに出かけられないという人も少なくない。
どうにか具体的な場づくりにつながればいいけれど、まずはこうして本のかたちで想いが共有されたことが大事だと思っている。
というわけで、14日のイベントでは事前に質問に限らず書店員の声を募って紹介・共有したいと考えていますので、ぜひ参加ください。また書店員の苦労や内面について知りたいという方からのご質問もお待ちしています。
遠方の方、またリアルタイム視聴が難しい方もよろしければ。書店員割引があります。
■その他の告知
中央大学卒業生で構成される出版白門会主催で4月20日(月)夜に「出版・書店の明日を考える」というデカすぎるテーマで講演します。場所は神保町の出版クラブです。中大生や中大卒業生以外も参加できます(というかぜひご参加ください。もちろん出版業界に就職したい中大生も歓迎です)。
デジタル・AI×出版に精通した堀鉄彦氏との対談パートもあります。堀さんも中大出身です。
先輩からお声がけいただいたので集客含めがんばります。
上記のように講演・イベントも(クローズドなものも含めて)オファーがあってありがたい限りですが、やはり書くのが本業であり、どんどん書きたいと思っていますので、原稿、書籍執筆、ブックライティングなどもご相談ください。
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