ブラジル出版市場における日本マンガ シェア、読者プロフィール、流通、価格、デジタルコミック事業者
■ブラジルの書籍市場とコミック市場のシェア
Nielsen BookDataと国内出版社などからのデータを元に作成されたCBL“Producao e Vendas do Setor Editorial Brasileiro”(「ブラジル出版セクターの生産と販売」)2023年版によればブラジルの出版物の販売額は約62億レアル(1レアル26円換算だと1612億円)。

コミックは販売部数ベースでは131万部であり、書籍市場の中でシェア0.41%を占めるにすぎない。
これに書籍全体の平均単価54レアルを掛けるとコミック市場の規模は7100万レアル、つまり約18億円(実際には日本マンガの単価はそれよりも安い。後述)。
コミックの種類別のシェアは発表されていないが、コミックのランキングトップ100のうち日本マンガが7割程度を占めると言われ、単純に7掛けすればブラジルの日本マンガ市場は12,3億円となる。
Bookinfo調べによると2024年にブラジルで最も売れた日本マンガは『呪術廻戦』1巻で20,948部、2番目に売れたマンガは「ONE PIECE 3 in 1 Vol.1」で19,624部(https://otakusbrasil.com/mangas-mais-vendidos-no-brasil-em-2024/)。
ただしこの調査では従来、コミック流通として大きかった新聞販売店の数字が含まれていない(新聞・雑誌販売店と書籍販売店は流通が分かれているのが日本以外の国では一般的であり、統計上も別カウントである)。
また、コミックの販売部数は2022年から2023年への伸び率は前年比44%増と勢いが増している。
■日本マンガの読者のプロフィール
ブラジルの出版業界団体SNELの委託によって実施された読書調査Instituto Pro-Livro (IPL)"6a edicao Retratos da Leitura no Brasil"2024によれば、5歳~70歳以上のコミックの読書率は10%。2011年19%、2015年13%、2019年11%と継続的に低下している。

若年層のほうが人気が高く、学生は15%、非学生は7%。ちなみにブラジル人の読書率自体はグラフの通りである。
しかし、あるブロガーが実施した定量調査によれば(https://esoumdesenho.wordpress.com/2018/10/03/consideracoes-sobre-os-leitores-brasileiros-de-manga/)、ブラジルのマンガ読者の大半は18歳から25歳(58.6%)、20歳~40歳の読者もかなり多い一方、14歳以下の読者は0.6%で、読者の80.6%が男性だという。ただし、どのくらい信頼できる調査かは詳細が公表されていないため不明だ。
マンガ出版社JBCによれば、日本マンガの読者には購買力のあるA・Bクラスが多い(http://intercom.org.br/papers/regionais/sul2009/resumos/r16-0436-1.pdf)。ただしこれは2000年代後半の情報であり、近年は変わっている可能性もある。
ブラジルではAクラスとBクラスは、購買力と世帯収入が最も高いグループを表している。
・クラスA
国の経済エリートを表す。
世帯月収が最低賃金20レアル以上(28,240レアル以上)
ブラジル人口の約2.9%相当
高級品、高級サービス、社会的名声の高い地位にある。
・クラスB
B1クラス:世帯月収12,683.34レアル以下
B2クラス:世帯月収7,017.64レアル以下
ブラジル人口の約21.8%を占める(B1層5.1%、B2層16.7)
A・B合わせて人口の約24.7%。これらのグループは一般的に教育水準が高く、労働市場でより責任のある地位にあり、民間教育や健康保険へのアクセスがあり、投資や消費性向能力が高く、住宅や自動車を所有し、先進技術を利用できる層である。
2015年のアンケート調査によれば、マンガ読者の55%がマンガとそれ以外のコミックスの両方を読んでいる(http://eventoscopq.mackenzie.br/index.php/jornada/jornada/paper/download/20/18)。
なおこのアンケート結果を含む論文は、ブラジルにおける日本マンガの受容の歴史をまとめていておもしろい。1970年代に『スピード・レーサー』(『マッハGoGo!』)がテレビ放映されたのがきっかけで関連コミックが発売されるようになった、とか、ブラジルの新聞販売店(後述)で最初に売られたマンガは『カードキャプターさくら』だった、など。
■ブラジルにおけるマンガの流通経路
日本のマンガの流通チャネルには以下がある。