韓国ウェブトゥーンの契約問題とIP展開2022夏
韓国のウェブトゥーン、ウェブ小説の契約問題
カカオウェブトゥーン·ウェブ小説45%手数料論難 2021.09.27
・カカオがウェブトゥーン·ウェブ小説に収益の最大45%を手数料として賦課していることが分かった。 10月1日から開かれる国会文化体育観光委員会の国政監査で、この問題が水面上に浮上。
出版業界によるとウェブトゥーン·ウェブ小説の流通はまず作家が出版社を通じて作品を出版した後、出版社とプラットフォームが契約を結ぶ方式で行われる。 カカオウェブトゥーン·カカオページを運営するカカオエンターテインメントは作品収益の通常30%の手数料を持っていく。 作品収益が発生する前に一定金額の印税を先に与える先印税条件で手数料率を45%に高めたりもする。 利用者が100ウォンの作品1編を見れば、このうち最大45ウォンをカカオが、残りの55ウォンを出版社と作家が分け合うというわけだが、出版業界はこれが過度だと見ている。カカオエンターは作品流通過程にこの手数料にふさわしい寄与をしているという立場。
カカオエンターテインメント関係者は「投資後、作品の企画·検収·マーケティング·広報などすべての連載プロセスをカカオが行い、マーケティング次元で利用者に与えるイベントキャッシュ(作品を見るための財貨)もやはりそれが書かれた作品の作家に現金で精算してくれるという点を考慮しなければならない」とし「ここに先印税(MG)を与える場合、(作品が収益を出せない場合、カカオが先印税分だけ損害を被る)先投資リスクを負うことになるので手数料率を45%に調整するのだ」と説明した。
大韓出版文化協会関係者は「MG契約は出版社ではなくカカオが望んですること」とし「先印税は普通数千万ウォンだが、作品が『待てば無料』ローンチングを通じてよく売れれば億台の収益が発生する。 この場合、先印税を通じてクリエイターにより少ない持分を配分するわけだ」と主張した。
カカオが作品審査を通じて流通可否を決めることができるため、うまくいく作品を持った出版社の立場では望まないMG契約を断ることもできない。 この関係者は「カカオとの契約の大部分は45%手数料の先印税契約でなされる」とし、カカオエンター関係者も「45%手数料適用作品も多くある」と話した。
先印税条件ではない30%手数料率に対しても意見が分かれる。 教保文庫·イエス24のような大型書店が紙本を流通して受け取ると知られた30%台の手数料率に匹敵するが、これに対して業界慣行に照らして適正だという反応と、紙本に比べて流通費用が低いウェブトゥーン·ウェブ小説に同じ手数料率を適用するのは過度だという反応が交錯。グーグルがネイバー·カカオを含むコンテンツアプリケーション(アプリ)に強制賦課しようとしたが過度だという批判を受けたインアプリ(自主)決済手数料率と同じでもある。
国会文化体育観光委員会はカカオエンターの手数料と共に、2次著作権と関連してクリエイターと不公正契約を結んだ疑惑など両社のプラットフォームパワハラ実態を綿密に調べるという方針だ。
※これが1年前のニュース。で、今年進展がありました。
韓国初の「ウェブトゥーン法」を作る 2022.09.22
・急変するウェブトゥーン産業の現実を反映し、クリエイターの権利を保障するための法が近いうちに国会で発議される。 ウェブトゥーン産業だけのための制定法が作られるのは初。
・該当法案はまずウェブトゥーン創作勤労者に対する概念を細分化する予定。作品創作システムが分化しただけに、メイン作家の他に線画、彩色など創作補助業務を担当する補助業務労働者を明示する。また、人工知能(AI)技術·3Dグラフィックツールなどウェブトゥーン創作に適用された新技術により分化した業務も区分。
・創作労働に対する補償を算定する新しい基準も用意。これまで業界では実際に投入された労働量ではなく、話数を基準に補償が支払われてきた。しかし、業界で要求する1回当たりのカット数が次第に増え、労働強度が増しているという問題意識により、このような条項の必要性が台頭した。告示など下位法令を通じてウェブトゥーン1回当たりの産出物を完成するのに所要される平均労働時間を算定。また、ウェブトゥーンクリエイターの休む権利保障のための有給休載権概念も導入される予定。
・ウェブトゥーンクリエイターがプラットフォーム·エージェンシー(CP)と連載契約時に投資·製作リスクからクリエイターを保護する条項も含まれる方針。
このため、不当なリスク転嫁の定義を各項目と規定する。合わせて既存約款法に従って契約当時のクリエイターに2次的著作物作成権など今後ありうる第3者との契約に対しても十分に説明するよう義務を負わせる。韓国コンテンツ振興院が業界およびクリエイターの自発的参加に頼って進めてきた産業実態調査も義務化する条項が含まれる。
※中国でも韓国でも産業として大きくなるに従って契約に国も介入するようになっていると。日本では正直さっぱりですが……。
韓国ウェブトゥーンのIP展開
マーベル·DCに追いつく「韓国版ウェブトゥーンユニバース」 2022.07.09
・MARVELやDCのように、ウェブトゥーン産業の最頂点にある韓国でも「ウェブトゥーンユニバース」が繰り広げられている。
・イ·ドンゴン(日本のLINEマンガでの作家名表記はmovin' GON)が連載中の「ジョジョコミックス」はグローバル累積照会数34億ビューを記録し、オンライン動画サービス(OTT)TVINGオリジナルドラマとして製作され大きな人気を集めている「ユミの細胞たち」と世界観を共有する。 「ジョジョコミックス」の主人公たちは「ユミの細胞たち」の主演キャラクター「グウン」が設立したグウンゲームズの職員だ。 「ユミの細胞たち」の後の時間軸を扱っており、細胞も登場する。ネイバーウェブトゥーン人気順位上位圏に位置して平均星点9点後半を記録中。
※『ジョジョ』は日本では翻訳されていない
・「ココロの声」で有名なチョ·ソク作家も「潮の領域」「ムンユ」「惑星人間」「黙示のインフルエンサー」等のスリラー作品の世界観は全て連動しており、ファンはこれを「朝夕ユニバース」と呼ぶ。 能力者バトル物である「惑星人間」の中に「潮の領域」の人物が登場したり、背景が映し出される。
※日本では『ココロの声』『潮の領域』『黙示のインフルエンサー』がLINEマンガで配信中
・現時点で最高の人気作家であるパク·テジュンが製作する男性向けアクションウェブトゥーン世界観「パク·テジュンユニバース」も大きな人気だ。 「外見至上主義」「人生存亡」「喧嘩独学」「クエスト至上主義」等。 「喧嘩独学」のキム·ムンソンが「人生存亡」に登場したり、「キム部長」の主人公キム·ブジャンが「外見至上主義」に登場。
・Ylabは、会社レベルでユニバースを構築。 ウェブトゥーン業界で初めて「世界観」の概念を導入した。 「スーパーストリングス・ユニバース」には「ザ·クイーンズ」「テロマン」等が含まれている。
さらに青春世界観「ブルーストリング」も展開し、「世の中はお金と権力」「スタディーグループ」「真の教育」等の作品の設定を読者が簡単に確認できるよう地域図も作った。 「真の教育」はネイバーウェブトゥーン人気順位1位。
女性向けウェブトゥーンユニバース「レッドストリング」もある。 3つの世界観の登場人物は、互いの作品にサプライズ登場することもある。 来年にはユニバースの本格ウェブトゥーン「スーパーストリング」のグローバルローンチングも控える。
・「アパート」「タイミング」「ムービング」を描いたカン・プルも「カンプルユニバース」を形成中。 「タイミング」の主人公が「アゲイン」の助演として登場し、「ムービング」にも登場。 「アパート」は映画化され、「ムービング」は今年下半期にディズニー+オリジナルドラマとして公開され期待を集めている。
※カン・プルは『純情漫画』で韓国ウェブトゥーンのメルクマールとなる作品を描いた作家。「カン・プル通り」があるくらい国民的人気がある。『ムービング』はピッコマで読める。
・ネスティキャット作家の人気作「トレース」も緻密な世界観を構築中だ。 トレースは2007年から連載を始め、15年以上連載を続けている長寿ウェブトゥーンで、9億再生数を超えた作品だ。 連載期間だけ膨大な世界観を誇るヒーロー物だ。 トレース1期はリマスターにまでなり、スピンオフ「トラブル」も連載された。
※たぶん日本未配信
・キム·ギュサムの「ハイブリッドシリーズ」やドラマで製作された「スイートホームシリーズ」、「他人は地獄だシリーズ」などもそう。
・IP人気の長寿化、多面展開が目的とされる
※Ylabみたいに企業としてやるのは日本のスタジオでもできるのでは。設定作るのが大変ですけど。
「BLウェブトゥーンドラマ化」大人気…足長スタジオコンテンツも続々 2022-07-12
・キダリスタジオがウェブトゥーン·ウェブ小説など自社コンテンツを通じて国内BL市場の成長を牽引。 上半期に公開された「下宿先、おぉ!」「バンジー」から下半期公開を控えている「オナのアシスタント」「ハッピーメリーエンディング」まで。
※KidariのBLは日本ではレジンコミックスを中心に配信されている
3月に公開された「下宿へおぉ!」「バンジー」は7月初め基準で再生数約130万回以上を記録した人気ウェブトゥーン原作をドラマ化。一夜にして5番地下宿の主人になってしまった雪原と個性の強い下宿生たちの右往左往ロマンスを描いたBLシチュエーションコメディ。 国内初のBLドラマ製作会社エモーションスタジオと共同で製作、ドラマ公開前月同期対比ウェブトゥーン売上額が300%以上増加。 これに対し、8つのシリーズ以外の劇場版としても追加製作され、第26回富川国際ファンタスティック映画祭に招待される快挙を達成した。
再生数約224万回以上の数値を記録し核心IPであることを立証した「オナのアシスタント」は「オナのアシスタント」は韓国を越えて日本市場を狙う。 31日、日本新宿でファンのための一部回目の事前試写およびソン·スンヒョンが参加するスペシャルイベントを計画している。
「活字アイドル」のテスター、ウェブトゥーンで。団体ポスター公開 2022.07.28
・ウェブ小説原作のウェブトゥーン「デビューできなければ死ぬ病気にかかる」(以下「デモッジュク」)のアイドルグループテスター団体ポスターとメンバー別ビジュアル映像が公開された。
「デモッジュク」(作家ペク·ドクス)は決まった期間内にアイドルとしてデビューできない場合、死を迎えなければならない人物「パク·ムンデ」と彼が属したアイドルグループテスタの成功的なデビュー過程を盛り込んだ現代ファンタジー小説だ。 カカオページで昨年1月に初連載を始めて以来、現在まで累積照会数2億1000万回、累積閲覧者数200万人、累積コメント80万個を記録し人気を集めた。ウェブトゥーン製作にはKWBOOKSとダオンウェブトゥーンが共同で参加。
カカオエンターテインメントストーリー部門のファン·ヒョンス代表は「活字だけで存在するアイドルが現実化し、実際のアイドルファンダムに劣らない巨大ファンダムとなる異例の現象は、IPが持つ無限のパワーと可能性に対してもう一度注目させる契機になるだろう」とし「カカオエンターは自社IPが持つ潜在力を多方面に引き上げることにより、持続的に高度化されたIPビジネスを展開していくだろう」と伝えた。
※カカオは音楽事業(旧カカオM。Melonなどを運営)もあるので一気通貫で自前で小説→漫画→映像・音楽・ゲーム→海外展開ができるのが強すぎる
※しかし普通、小説でアイドルものは鬼門(文字では音もダンスも表現しづらいので)なのだがなぜこれは売れたのか…
ネイバー、ウェブトゥーン映像化制作支援法人米LAに設立 2022-08-17
・ネイバーがネイバーウェブトゥーンを素材にした映画·ドラマの製作·投資支援を専門担当する法人を米国ロサンゼルスに設立。独自のプロダクションスタジオNとワトパッドウェブトゥーンスタジオ、協力会社CJENM系列に依存してきたウェブトゥーンIP(知識財産権)の映像化ルートを北米に拡張するための布石。同社は6月末、米国カリフォルニア州ロサンゼルスのウィルシャー大通り(WilshireBoulevard)に「NWメディアコンテンツ」を設立。NWメディアコンテンツはネイバーが保有しているウェブトゥーン、ウェブ小説IPを活用したコンテンツ製作支援を目的に設立。設立初期の投資金額は107億6200万ウォン。
・ネイバーウェブトゥーンの昨年の国内売上は3553億ウォン、営業利益は702億ウォン。ネイバーは昨年だけでネイバーウェブトゥーンに3500億ウォン規模の増資を断行。 このうち1700億ウォンを韓国最大のウェブ小説サイト・ムンピア買収に投入。
チェ·スヨン代表は最近第2四半期実績発表カンファレンスコールを通じて「ウェブトゥーン(海外基準)とメタバース部門はこれまで意図された赤字を出し投資を断行してきた」とし「20%程度の粗利を出すウェブトゥーン収益化モデルが数年内に海外でも定着するだろう」と説明した。
毎日更新は今日で終わりです。ではIMARTの「ウェブトゥーンの販売」パネルでお会いしましょう
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