「神保町の顔」三省堂書店の全然保守的じゃない歴史
2026年1月19日に神保町の出版クラブホールで行われる「神保町歴史談義とこれからの神保町」(午後3時~4時半)というセクションで東京堂さんと書泉さんの対談の前に両社の歴史を語るお役目を振られまして。ぜひみなさんにいらしていただきたいので、関東近郊の方は今から空けておいてください。
といっても私も資料だけ集めてまだ何もつくっていないんですが(苦笑)、神保町の新刊書店といえばもうひとつ三省堂書店さんがあるわけです。そしてこの夏に三省堂でイベントをやらせていただいたときの資料ならあるので、それをnotebookLMに突っ込んで再利用して告知(前哨戦?)のかわりにしようかなと思っています。本当は三社絡めて神保町の新刊書店の歴史を描ければおもしろいのですが、まあ、それは1月19日に多少なりともできればな、と……。
三省堂書店といえば「神保町の顔」というイメージがあるが、それは「保守本流」という意味ではない。むしろ明治~昭和初期の三省堂はきわめてアグレッシブな経営(創業者・亀井忠一時代)、先進的で洗練されたイメージを打ち出した経営(亀井寅雄時代)をしていた本屋、いや、「学生のデパート」だった。
自分でつくったイベント用の資料をnotebookLMに食わせて出力させたので画像はすべてAIが勝手につくったイメージであって現物そのものではありません。ご注意ください。あと不正確な要約に関してはコメントを付けていきます
明治から昭和初期まで神保町は何度も火災に見舞われており(関東大震災、東京空襲含め)、三省堂もほぼ毎回被災している
三省堂はほかにもバクチみたいな商売のしかたをあれこれしていておもしろいので国会図書館のデジタルコレクションで読める三省堂の社史をぜひ読んでいただきたい
※こんな建物ではないです これはAIがつくったイメージ図。当時、百貨店という小売の業態が新奇に登場して従来型の個人商店を都市部では駆逐していったのに対抗して、本屋も多角化し、近代的な店構えにするのだという動きがあった。たとえば横浜の有隣堂も同様。
「日本のMacmillanをめざす」とぶち上げた亀井寅雄(イケメン、洋行帰り)時代の戦前の三省堂はほんとうにしゃれているし、やっていることもおもしろい。いま思い起こすべき本屋像のひとつはこの時代の三省堂だと思う
教科書販売については戦後もある種の利権、安定的な売上基板ではあったはずだが、三省堂の社史では戦前の教科書販売の方がよほど儲かったみたいなことが書いてあるので、ここでは公式見解を採用。まあ、子ども~学生が激減してだんだん大人の街になっていったのはたしか。戦前の神保町にはカフェーもあって、夜にはネオンがあやしく光る通りもあり、いまのような雰囲気とは違った
オイルショックの時期の三省堂の二度目の倒産については『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』でも書いた。なお、現在は再び亀井家の方が社長です
このファネルの考え方をくわしく知りたい方は今度出る『この時代に本を売るにはどうすればいいのか』を買って読んでください
「暗黒時代」っていう言い方は私の見立てじゃなくて、公式の社史にそう書いてある。社内の労働組合の立場から書いてるからだと思うけど
3点目はなんでAIがこんなふうにまとめたのかよくわからない。本屋を知ってもらう、楽しそうと思って来てもらうといった入り口(認知)の部分はもちろん大事だけど、来店頻度も客単価もどちらも重要。「学生のデパート」は商材の多角化による客単価の最大化もはかるものだったので、このまとめはおかしい
東京堂と書泉の歴史についても「へ~」って話や現在の書店業、出版ビジネス的にも活かせるエピソードがありますので、来年のイベント、ぜひご参加ください。
■告知
子ども・若者向けの本紹介エッセイを大人向けに地味に連載しています。
12月16日16時からと20時からYouTubeに出ます。アーカイブ配信あり。
夕方のJEPAの方は今年の電子出版のふりかえり。私は20分くらいしゃべったあとで共同討議が30分くらい参加。ほかに鷹野さんが技術動向、菊池さんがマンガ動向を20分ずつ語ります。
夜のtoi booksさんのチャンネルでは独立系書店から見た『この時代に本を売るにはどうすればいいのか』話ということで。
そういえばnotebookLMを使ったYouTubeとPodcastチャンネルをつくりました。いまのところ自著のAI解説動画です。とりあえず始めたくらいの感じですが、試行錯誤しながら考えます。縦型ショート動画もつくりたいですが、無料で使える範囲のサービスだと微妙すぎてこちらも試行中
1月16日(金)のNBC(名古屋ブックセンター)でのトークイベントもあります。名古屋周辺の方よろしくお願いします。話のネタがtoi booksさんのとかぶりすぎないように何か考えます。
ほか1月は
9日(金)に韓国の第6回成均国際文化研究会の「第1部グローバル文学研究の新しいトレンドと読書・出版研究」にて、Rita Felski「専門読者とアマチュア読者:ポストクリティックにおける対称性理論の適用」に続けてしゃべるという、文化批評界隈の人間ならクソビビる並びで日本の10代の読書環境と読書行動について発表します。ウェブ小説やBookTokをPostcritiqueの議論と絡めるロジックを考えたので、まあ、そのへんにご関心のある人にはおもしろいと思います。私は日本語で話しますが大半は韓国語で発表があり、英語翻訳があるという感じです。たぶん誰でも参加できるはず(Zoom開催なので)。
あと今から申込はできないんですが1月24日にJPIC読書アドバイザー養成講座で10代の読書について講義します。ご参加の方は質問等お願いします。聞いてみたいという方はぜひ来年申込ください。
ほかおそらく
1月29日に電子図書館関係のイベント登壇(「だれひとりとりのこさないための電子図書館」的な話をしようかと)
1月30日に都内の某独立系書店で『この時代に本を売るにはどうすればいいのか』を踏まえつつ、『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』を売っていくにあたって個人として自分が何をしたのかとその反省、今後の展望(?)について話すイベントをやります。これはこれで作家、ライターその他個人・少人数で活動している人にはおもしろいかと。
もろもろ、決まったらお知らせします。
新刊、既刊問わずイベント、講演、取材その他お声がけお待ちしています。
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