KOCCA『海外コンテンツ市場分析』2024年版から見る北米コミック市場
■Cognitive Market Research(CMR)のレポートを参照しているのだが…
北米コミック市場は2023年時点で印刷コミックが全体の64%、デジタルコミックが36%を占め、今後はデジタル市場が拡大し、2031年には両者の比率が近づいていって55.4%:44.6%になると予測されている。
……とあるが、注意が必要なのは、ここで参照されているのがCMR調査という点だ。
CMRは米国拠点ふうに見えるが実際はインドを拠点にしており、肯定的な評価も多いもののRedditなどでは「インドにアウトソースした低品質な調査」「ネットで拾ったほかの調査報告書からコピペしている」と批判されている。信頼性に関しては若干割り引いて見た方がいいかもしれない。
※インド系の調査会社はめちゃくちゃ多いが、筆者はPerplexityなどで検索するときは中国系と並んで検索対象から除外するように指定している。
■北米におけるウェブトゥーン市場規模の予測をアテにしてはいけない
困ったことに北米のウェブトゥーン市場の規模やその予測に関してはQYResearchの
Global Comic Book Market Research Report 2024
Global Webtoons Market Size, Status and Forecast 2024-2030
が参照されている。
QYResearchは2007年に中国で設立された調査会社だが、少なくともサブカルチャー、コンテンツ産業分野での精度は当該ジャンルの専門家からするとかなりあやしいレベルだと言わざるをえない。
(たとえば筆者は日本のアニメ産業の推計をしているある関係者が「ウェブトゥーン市場が将来○兆円になるってどこの調査会社が言ってるんですか? QY? あ~、あそこはデタラメですね」と言ったのを聞いている)
しかし日本でも2019年頃からウェブトゥーンスタジオが乱立したのは同社のレポートで「市場が爆増する」と謳われたからであり、罪が重い。
とはいえ一応引いておくとQYResearchによると、北米ウェブトゥーン市場規模は2023年時点で5億7,841万ドル(約8,000億ウォン)と推定され、2030年までに21億3,004万ドル(約2兆8,000億ウォン)に成長すると予測されている。
内訳を発表しないことも多いが、実際の売上や利用者を知りたければNAVERやカカオのIRのほうが正確である。
■北米の主要なコミック出版社
北米ではざっくり分けると、連載形式の(薄い)コミックブックと単行本形式の(比較的厚い)グラフィックノベルがあり、後者が市場の約78%を占め、14億6000万ドル(約1兆8400億ウォン)。
(日本マンガやウェブトゥーンは北米では紙の本として刊行される場合は――それぞれ個別に分けない場合は――「グラフィックノベル」に分類される)
・主要出版社の市場シェアと動向
ここで参照されているのは
である。
Statistaは「データの出所がよくわからないときがある」などといった評判もあるが、基本的には信頼できると思われる。
同調査によるとMarvel ComicsとDC Comicsでアメリカのコミック市場のシェア50%を超える。
三番手はImage Comics。1992年にベストセラー作家たちによって設立された出版社で、コミックブック、グラフィックノベルともに手がけ、これまでダイヤモンド・ブック・ディストリビューターズ(Diamond Book Distributors)を通じて独占的に流通を行ってきたが、2024年1月にパラマウント系列の超大手出版社サイモン&シュスター(Simon & Schuster)と新たな流通契約を結んだ(ダイヤモンドは2025年に潰れた)。
北米の漫画消費は、主にオフラインの書店や独立系書店を通じて行われている。
北米のコミック事業者によるデジタルコミックサービスでは、