vol.16 子どもコンテンツフォーラムに登壇します

毎週気になった出版・コンテンツ業界関連ニュースに加えて毎月第1週目はエッセイ(パーソナルなこと)、第2週目は過去原稿の再録(or書き下ろし)、第3週目は最近の寄稿まとめ、第4週目は気になる新刊リスト、第5週目はフリー、ということで今回は新規原稿を配信します。
飯田一史 ichishi iida 2021.06.12
誰でも

【オンライン】ウェブトゥーン翻訳ってどう始めるの? そしてその魅力とは?

■日 時:日時:2021年6月19日(土)20:00~21:00

■参加費:イベント参加券1500円

■定 員:30名

NetGalleyで日販速報が読めるように

2021年5月期 店頭売上前年比調査「鬼滅の刃」と巣ごもり需要による前年好調の影響により、前年比92.4%

コロナ禍明けの書店動向はどっちに転ぶのか…

ソニー・ミュージックエンタテインメントが運営する物語投稿サイトmonogatary.comとコンテンツ連携 stand.fmの配信者が、投稿されている対象作品を朗読可能に

投稿されてるの短篇だから全部読めますね、がんばれば。

漫画王国・日本を漫画で魅了した…カカオジャパン代表の成功秘訣

2016年5月14日、公開から1カ月から経過したデジタル漫画アプリ「ピッコマ」の日本国内の一日販売額はたった200円だった。一日のアプリ利用者は300人。5年が過ぎた2021年5月5日、ピッコマのこの日の販売額は43億6800万円になった。5月7日基準で一日の利用者数は420万人に達する。
現在ピッコマにある漫画6余本のうち、縦スクロールで見られる「韓国ウェブトゥーン」は600本余りで1%にすぎない。残りはほぼ日本で出版された漫画をデジタル化したものだ。だが、全体販売額でウェブトゥーンが占める比重は45%程度と高い。

小説投稿サイト、マンガ編集部、書店に悪役令嬢ブームについて聞いてみた

「悪役令嬢後宮物語」は2012年2月に小説家になろうで連載開始。2013年8月にフロンティアワークスのレーベル・アリアンローズより単行本化され、2019年12月に全8巻で完結。晴十ナツメグによるコミカライズも行われた。平井氏によると小説家になろうが把握している中で、最初に書籍化された悪役令嬢作品が「悪役令嬢後宮物語」だと言う。
「異世界コミックの次は少女マンガをやりたい、ファンタジーものだったら男女問わず読んでくれるんじゃないか……という思いがありました。2015年、2016年くらいに『Re:ゼロから始める異世界生活』などはもちろん、『盾の勇者の成り上がり』『八男って、それはないでしょう!』といった小説家になろう発作品のコミカライズがブームになっていて、実際に売り上げもよかったので、“異世界コミックの女性版”という立て付けならできそうだと。そうして作ったのがFLOS COMICです」(松井氏)
「『悪役令嬢』とついていると、電子書籍の売り上げが爆発する印象があります。もともと、FLOS COMICの読者さんはサイト内をかなり巡回する……つまりFLOS COMICの作品をかなり読んでくださっているというデータがあって、サイト内の作品の売り上げも近くなることが多かったんです。でも、悪役令嬢作品が増えてきた2019年あたりから、悪役令嬢作品は飛び抜けて売り上げが上がってきています」(松井氏)

子どもコンテンツフォーラム(CCF)に登壇します

キックオフセミナー「最近のヒットコンテンツに見る子ども・親子のニーズ」 第1回 6月22日(火) 16:00~18:30

登壇します。よければご参加ください。講演のさわり部分を配信します。

児童書市場は堅調

まずマクロ環境を確認しておきますと、児童書市場は少子化にもかかわらず非常に堅調に推移しています。出版科学研究所が発行する『出版指標年報2021年版』によれば、2020年の児童書市場は前年比5.7%増の930億円。900億円超えは2008年以来のことになりました。

いまだに「子どもの本離れ」としばしば言われますが、これは誤った認識です。子供の本離れはたしかに80年代から90年代末にかけては深刻化していました。しかし、2000年代以降は市場規模のみならず、小学生の平均読書冊数や不読率(まったく本を読まない人の割合)もV字回復しています。

なぜここまで好調なのかについては、先ほど挙げた拙著『いま、子どもの本が売れる理由』にて詳しく歴史的な経緯を書いておりますが、マクロの動向は本日のテーマではありませんので、適宜、必要に応じて触れるくらいにしておきます。

どんな本が売れているか?

そこから見えるニーズは?

これについて考えていきたいと思います。

ではどういう切り口から考えるのか。

デリバリー・DMU・内容

この3点から考えていきます。

デリバリーというのは、どうやって届けるのか? いつ読んでもらうのか? という視点ですね。いくらいい本を作っても、知ってもらえない、買ってもらえない、買ったけれども読んでもらえないとなると広まっていきません。1日24時間、月曜から日曜までの7日間のどこかのサイクルの中に組み込まれないと、本は読まれない。

DMUはDicision Making Unit、購買意志決定者のことですね。子どもの本のサイフを握っているのは保護者や司書、学校であり、子ども自身ではないことが多い。したがってこうした大人の都合や思惑、たとえば可処分所得や教育トレンドの影響が無視できません。

最後に、内容というのは、本の中身ですね。大人がいくら読ませたいものであっても、子どもが好きでなければ当然広まりません。

この3点から近年の子どもの本のベストセラーのポイントを整理していきたいと思います。

なお、私が「子どもの本」と言うときには、児童書に加えて子ども向けのマンガや雑誌、なども広く含んでいます。子どもはいわゆる児童書だけ読んでいるわけではありませんので、子どもの行動やニーズの実態を捉える場合には広い意味での「子どもの本」を見ていったほうがいいと思っています。

では本題に入っていきますが、まずはデリバリーに関してです。

繰り返しになりますが、デリバリーというのは

どう生活時間に食い込む? いつ読むのか?

こういう観点のことです。

ここで歴史を遡りますが、

80〜90年代の児童書離れの背景

は何だったか?

・ファミコンブーム

・アニメブームと連動しマンガ市場拡大

これらがありました。70年代までは家庭用のゲーム機は一般的ではありませんでしたが、1983年に任天堂のファミリーコンピュータが発売されて以降、爆発的に広がりました。

もうひとつは『宇宙戦艦ヤマト』のヒットをきっかけにした1977年以降のアニメブームによってTVアニメの制作本数が増え、その原作供給源としてマンガが使われました。これによって、子どもの間に週1回TVでアニメを観て、週1なり月1でマンガ雑誌を読む、3,4か月に1回コミックスを買うというサイクルが強まりました。週刊少年ジャンプが部数を飛躍的に伸ばし続けていたのは子どもの児童書離れが深刻化していく時期と重なっています。つまり児童書は読まなくなっていったけれどもマンガはみんな読んでいた。

ゲーム、アニメ、マンガに時間を取られて、児童書を読む時間が減った。

こう整理できます。

では2000年台以降V字回復した背景には何があるか?

教育政策と読書推進運動の影響が大きい

・朝読の普及

・小学校で週1読書の時間

・ブックスタート

・読み聞かせの普及

といった事柄が挙げられます。

朝読こと朝の読書運動は、1回10分から15分、週に1回から5回、授業が始まる前に時間を割いて児童・生徒が自分で選んだ好きな本をただ読む、というものです。

朝読は80年代後半に千葉県の私立高校でスタートしたものの、当初10年間はなかなか広がっていきませんでした。最初にブレイクしたきっかけは90年代末に「学級崩壊」対策として児童・生徒の心を静めるものとして注目されたことにあります。そして次に、2000年に実施され、2001年に発表されたOECD加盟国を中心に行われる学習到達度調査PISAによって、日本の子どもの「読解力」(リーディングリテラシー)のスコアがフィンランドに負け、また、読書量が参加国内では非常に少ないことが明らかになり、もっと本を読ませなければダメだという空気が醸成されたことで、飛躍的に実施校が伸びました。

文科省の統計によると現在の小学校の数は19738、これに対して2020年3月時点の朝読の実施校数は15956。80.8%で実施されていることになります。

現在、小学校の児童数は6,368,550人ですから、単純に8がけすると514.5万人が朝読に取り組んでいることになります。

仮に週1回1日10分だとしても1、2か月に1冊くらいは読めますよね。つまり最低見積もっても2か月で500万冊分、1年で3000万冊の読書需要が発生しているわけです。朝読実施以前はこの需要はまったくありませんでした。ところが、今ではそういう読書時間が半強制的に発生している。読書のための時間がブロックされた。このインパクトは大きい。

マンガにしろゲームにしろ、おもしろいからのめりこむわけですが、少なくない子どもにとって本はそれまで敷居が高い、ないしつまらなそうに見えていたのが、実際触れてみたらおもしろいじゃないか、と。あるいは、手に取った本がおもしろくてもつまらなくても朝読の時間は必ずあるわけですから、どうせなら自分が読みたい、おもしそうな本を読もうという動機が生まれる。

朝読以外にも、現在多くの「小学校で週1回、国語の時間を読書にあてる」ということが行われています。これは朝読ほど自由とは限らないようですが、いずれにしても本に触れる時間が学校において確保されたという意味では朝読と同じです。

90年代までに減少し続けてきた読書時間が、2000年代以降は再び、日々の生活サイクルの中に確保されるようになった。

ブックスタート

ブックスタートは日本では2001年にスタートした、新生児向けに乳児検診の会場などで行われ、保護者と子どもがいっしょになって本と触れ合う時間を持ち、新生児向けの絵本がプレゼントされる、というものです。イギリスで小学校に入学してきた子どものなかに本を渡しても「何これ?」みたいな態度の子、つまり家庭でまったく本に触れてこなくてどう本を読んでいいのかわからない子どもが目立つようになったことへの危機感から1992年に始まった運動です。

日本では現在、全国の市区町村数1741のうち、1079市区町村、62..0%の自治体で行われています。

これは参加は強制ではないですが、やっている自治体ではおそらくほとんどの親子が参加していると思います。2020年の出生数は87万2,683人でしたが、これも単純に6掛けすると523,610組の親子が本と触れ合う機会と赤ちゃん絵本が与えられたということになります。

このようにして日本人に新生児のときから本と触れ合う機会や習慣ができた。今では赤ちゃん絵本の存在に誰も疑問を抱きませんが、その昔は「文字も読めないのに本を見せてどうするんだ」という声もありました。でも、いったん目の前で赤ちゃんが本を見て笑ったという反応があれば、そのあと保護者は本を買うようになりますし、寝る前に読み聞かせをしようという気になりますよね。ちなみにブックスタートで配付される絵本は、出版社が無料で提供していますので、これ自体では儲けにはなりませんが、絶大なるプロモーションになっていると言えます。赤ちゃん絵本市場もブックスタート普及に伴って拡大したと見られています。

読み聞かせの普及

実は読み聞かせがどのくらいの頻度や時間で行われているかに関する定量調査は行われておらず、統計データがありません。また、読み聞かせがいつどの時期にどう普及したかも定量的な研究がありません。とはいえ、これもやはりこの20年余りで90年代末までとは段違いに広まったという認識はおそらく間違っていないと思います。そもそも私が子どもだった80年代から90年代前半にかけては「読み聞かせ」という言葉自体が一般的ではなかったですし、近年のように書店や図書館、学校で頻繁に行われるという環境ではありませんでした。

JPIC(出版文化産業振興財団)さんの読み聞かせ人員を養成する講座が始まったのは1993年ですが、2020年までに全国述べ5万人の受講者を輩出しています。仮にこの5万人が月1回、読み聞かせをしたら年間60万回、1回10人の子どもの前でしたら年600万人に対してフェイストゥフェイスで読み聞かせが行われていることになります。実際には講座を受けていない人も含めれば全国各地で年間百万回以上、延べ人数では一千万人以上の子どもに対して読み聞かせイベントが行われているのではないかと推定されます。

読み聞かせも子どもの側からすれば、多くは「自分から本に触れに行く行為」ではなく、「向こうからやってくるもの」「たまたま遭遇したもの」、大人によって勝手にデリバリーされるものですが、こういう時間がこの20年で急激にできた。

デリバリーから見るニーズ

・朝読の普及

→短篇集(5分後、児童文庫)、軽くて小さい本(マジック・ツリーハウス)

・ブックスタート

→赤ちゃん絵本、しかけ絵本(ころりん・ぱ!)

・読み聞かせの普及

→大型絵本

こういうものがあります。

……続きは講演で!

(そのうちここで配信するかもしれませんが)

outro

猫が夜中に「かまえー」「かまえー」とやたら鳴くようになって寝不足です。かまってもごはんをあげてもずっと鳴くので困り果てています。

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