『文章からAIくささを消す方法』はじめに
「はあ……まーたAIでポン出ししたレポートか。これで何人目だ? 心底うんざりするな」
「このオッサン、AIに書かせた文章そのままでうちに営業メールを送ってきてるな。ナメられたもんだ」
こんな光景が、世界中に広がっている。
ChatGPTやGemini、Claudeといった生成AIサービスを使うことは日常になった。
うまく使えれば、仕事や勉強に役に立つ。これはもう、間違いない。
しかし、AIの出力には特有の「AIくささ」がある。
だが、日常的にAIを使っている人や、AIを使った文章を日々読まされている人たちは「これは使ってるな」と一瞬で見抜く。
その瞬間、テンションが急激に下がる。
ゴミを見るような目に変わる。
いやいや、AIが書いたものでも、中身がちゃんとしていればいいじゃないか、と思うかもしれない。
それはそうだ。
だが、AIで「ポン出し」――生成AIで出した結果をそのままほぼ編集せずに使うこと―しただけのもののクオリティは「たいしたことがない」「ウラトリ(事実確認、参照したソース)があやしい」と思われやすい。
そんな程度のものなら、誰でもすぐに作れる。
価値があるわけがない。
そう思われてしまう。
実際には、その人なりに独自に考えや資料、取材データなどをAIに食わせた上で出力した文章なのかもしれない。
しかし、それでもアウトプットをいじらずに「AI文体」のまま他者に渡してしまうと、読んだ側からは、ポン出しと区別がつきにくい。
結果、読者は「これはいい加減なものだな」と低評価をする。
「AIっぽい文章かどうかなんて、気にしたことないし、批判されたこともない。おおげさだな」と思ったひともいるだろう。たしかに、気にしないひともいる。だが一方では、AI文体にほとんどアレルギー的な拒否反応を示すひとも少なからずいる。
どちらかといえば、言語能力が高いひとほど、AI文体に敏感である。そして今の世の中では言語能力が高いひとが、学校の先生や会社のマネジャーなど、提出された文章や資料、課題を評価する側にいる確率が高い。
「AIくささ」を放置したまま提出することは、マイナスに働くことはあってもプラスになることはない。
私は「AIを使うな」「ラクするな」と説教したいわけではない。
分野にもよるが、AIは使いかた次第でヘタな人間がつくったものよりハイクオリティなものを出力してくれる。使い方とお金のかけ方次第で、人間では到底不可能な高度な分析さえしてくれる。もはや、AIをかしこく使いこなせないほうがまずい。
また、ラクしたいのは誰だってそうだ。
かつ、あらゆることを適当にやりすごしたいという人は少ない。
むしろほとんどの人は、メリハリを付けたい、または付けないとやってられないから、相対的に手を抜きたい課題・作業についてはポン出しに流れてしまう。
ちゃんとしないといけないところ、力を入れたいところに時間を割くためにも、うまく手を抜くところを作りたいのである。だからAIにちゃちゃっと文章を書かせて済ませてしまう。
その気持ちはわかる。
しかし、手の抜き方が雑だと「この人は一時が万事いい加減なのではないか」と疑われ、信用を失う。
パッと見ただけで「これ、AIで書いたやつじゃねえか」と見抜かれ、読んだ人に怒りやため息とともに「読む価値なし」という扱いをされる。
また逆に、ふだんあまり生成AIサービスを使っていない人のなかには「書いた文章がAIによるものなのかどうかを、どうやって見抜けばいいのかわからなくて困っている」という声もある。
本書では、そうしたありふれた悲劇を防ぐ方法について解説していく。
この本を読めば、生成AIを使った文章の特徴にはどんなものがあるのかがわかる。
そして、どんなふうにいじればAI臭を消せるのかを説明していく。
「見抜き方」の本であると同時に「直し方」、もっと言えば「うまいサボり方」「ごまかしかた」の本でもある。
困ったことに、プロンプトだけでは、AI文体くささは消しきれない。あるていどは人力で直す必要がある。
AIの性能の発達はものすごいものがあるが、一方では、人間が「AIくさい」と思って違和感を抱く文体はいっこうになくなっていない。少なくともしばらくのあいだは、人間が手を入れる必要がある。
というわけで、この本では主に「AIの使い方」よりも「AIバレを防ぐ方法」「AIくさい文章を直す方法」を扱っていく。
本書はまず、ポン出しによってうまれた最低ライン以下の文章を、最低限の工数で読者に「これはAIだけで書いた文章ではなさそうだな」と思ってもらえるものに作り変え、一応の及第点レベルにすることをめざす。
志の低い本である。
しかし、これこそが、いま世の中でもっとも求められている文章術のひとつだ。
たとえば中高大学の教員は、日々、冒頭で述べたようなポン出しの文章を読まされることにうんざりし、イライラしている。多くの職場でもそうだ。
筆者はビジネスメディアや企業のオウンドメディアの記事でも、著名な人物や専門家の発信でも、AI文体丸出しの原稿をしばしば目にしている。これはメディアや会社、有名人の信頼に関わる問題だ。
こんな状況だからこそ、「ざんねんなAIテキスト」を「AIを参考にしたかもしれないが、人間の手が入っているな」と思わせるくらいクオリティまで上げることだけで、相対的に良いものに見せられる。
本書の内容を知っているかどうかで「おサボりくん」認定されるか、それとも人間として課題に取り組み、文章を書こうとしている存在として扱われるかという決定的な違いが生じる。
現代の文章リテラシー、マナーとして、この本に書かれたことをマスターしてもらえたらと思う。
■告知
文化通信のオンラインイベント(一部、東京都内の会場でのリアル参加あり)に出演します。ぜひお申し込みください。聴き手は本屋ライターでシェア型書店もやっている和氣さんです。
8月15日土曜日、ジュンク堂書店池袋本店にて吉成信夫さんと対談します。こちらは配信はない予定です。
9月5日土曜日夜、名古屋NBCにてトークイベントあります。中部の皆さまよろしくお願いします。
8月4日頃発売です。新書ではなく単行本です。刷り部数が少ないので確実に入手されたい方は推し書店にてご予約・ご注文ください。
「日本児童文学」7・8月号に『かいけつゾロリ』論を書きました。『ゾロリ』を絵の構図や画面の配置、キャラクターを捉えるカメラの位置やアングルから読み解いています。あんなにパースを効いた絵を多用している児童書、ないと思いますね。字や物語にばかり注目せずに絵と文字をともに語るべきというのは新刊『ゆる読書』の問題意識のひとつで、その実践編とも言えます。
これも「読書」を拡張する、という新刊のテーマと関連する記事。
連載「読書推進」再考⑥「読書推進」と国語科における「読書指導」の距離 を掲載
インプレス『電子書籍ビジネス調査報告書2026』に昨年に引きつづきメイン執筆者として参加しました。今年は初めて狭義の電子書籍市場に加えて、同人誌の電子版などの市場も試算しています(試算自体はインプレスですが、何をどうカウントすべきかは議論し、方向性決めにも参加しました)。
電子書籍市場も踊り場にさしかかり、電子単体でというより合わせ技で伸ばすことを考えねばならない時代になったことを前提に各種プレイヤーの動向や施策をまとめています。
8月に『ゆる読書』が出て、9月に『文章からAIくささを消す方法』が出て、10月に『若者の「読解力低下」というウソ』が出ます。年初に『この時代に本を売るにはどうすればいいのか』が出ているので年4冊刊行。
AIの本以外は昨年から仕込んでいたとはいえ、こんなに重なるはずじゃなかった…
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